業務分野の異なる法律事務所に転職する場合、向き不向きはある?
法律事務所の業務分野が異なっても、法律事務としての業務内容が大きく変わることはありません。業務分野ではなく、担当する業務範囲や求められる職務が異なってきます。転職先を決める前に業務内容や社風などその事務所についてよく調べ、自分が長く働ける職場かどうかを判断することが大切です。
法律事務所の主な業務分野は?
法律事務所に所属する弁護士は、法律に関する総合的で広範囲な知識を身につけ、様々な業務分野の案件に対応する必要があります。法律事務所の主な業務分野について説明します。
法律事務所の業務分野について
大手の法律事務所の場合、業務分野ごとに専任の弁護士がクライアントからの依頼に対応しています。中小規模の事務所では少人数の弁護士で仕事を回していく必要があるため、依頼内容により引き受けられる分野が限られることがあります。
- 民事事件
- 家事事件
- 刑事事件
- 企業法務
民事事件
法律事務所に持ち込まれるトラブルのほとんどは民事事件なので、それを取り扱わない事務所はほぼありません。民事事件として扱われる分野は幅広いため、交通事故や債務整理など、得意分野に力を入れて活動している弁護士が多く見受けられます。
家事事件
家事事件も民事事件の一部ですが、離婚や相続などの家庭内での紛争がこれに区分されます。最近はDVや遺産相続などのトラブルに関する相談も増えており、これらの分野を専門にしている弁護士もいます。
刑事事件
刑事事件では、弁護士は被疑者が起訴される前には起訴猶予を請求したり、起訴された後は被疑者と面会して裁判に向けての方針の検討を行ったり、必要があれば保釈請求手続きなどを行います。少年事件など特殊な分野の場合は、少年問題を専門にしている弁護士に依頼されることが多いでしょう。
企業法務
企業法務の分野では、法律事務所は企業と顧問契約を結び、定期的にリーガルアドバイスを行うほか、知的財産に関する法的トラブルの解決やM&A(企業の合併・買収)、渉外ビジネスの支援などを行います。
業務分野の違いによる法律事務の仕事の違いは?
弁護士は基本的にどのような分野でも依頼があれば対応すべきではあるものの、弁護士により得意分野や適性の違いがあるため、法律事務所によっては特定の分野のみに絞って業務を行っている場合があります。では、法律事務所で働く弁護士秘書やパラリーガルの仕事は、業務分野により異なることがあるのでしょうか。
法律事務の仕事は業務分野が異なっても基本的に同じ
法律事務の基本的な業務は、弁護士が仕事をしやすいようにサポートすることです。そのため、業務分野が異なってもすることが大きく変わることはありません。裁判所へ提出する文書や資料の作成から電話や来客対応、お茶くみや事務所の清掃まで様々な業務をこなす点ではどの法律事務所も共通しています。
特定分野の法律事務所は業務内容が特殊な場合も
特定分野を専門とする弁護士のサポートをする場合、求められる業務も特殊なことがあります。たとえば、渉外案件を専門分野とする渉外事務所の場合は、書類作成や上司とのコミュニケーションも英語で行うことがあります。また、知的財産や特許を扱う法律事務所では各種知的財産権の登録出願方法や知的財産権のビジネスでの活用方法について知識を身につけることが要求されます。
弁護士を補助する立場で業務分野の適性はある?
弁護士秘書やパラリーガルが行う基本的な仕事内容はどの事務所でも大差はありません。しかし、業務分野による向き・不向きや適性はあるのでしょうか。
業務分野の適性はどのようにわかる?
法律事務所に限らずどの企業に転職する際にも言えることですが、その分野に向いているかどうかは個人差があります。弁護士秘書やパラリーガルとしてできるだけ長く働くためには、希望する法律事務所の業務分野が自分に合っているかどうかをよく見極める必要があります。
- 担当してきた案件を振り返ってみる
- 仕事以外の人生経験や興味が関係することも
- クライアントにより適性が異なることも
担当してきた案件を振り返ってみる
これまで法律事務で担当してきた案件を振り返ってみましょう。
同じ民事事件でも、たとえば離婚問題と債務整理ではクライアントへの向き合い方や業務の進め方は異なります。相談内容に興味が持てるか、逆に苦痛を感じるかは人それぞれです。また、特許出願の補助業務などは、出願書類の作成や出願内容のチェックなどが中心で、地道にコツコツと行うデスクワークが好きな人に向いているでしょう。
仕事以外の人生経験や興味が関係することも
プライベートで離婚や遺産相続の問題を経験したことがある人は、業務上でも相談内容にすんなり入っていきやすく、業務分野の知識を深めやすいことから適性につながることもあるでしょう。また仕事以外で自分がどのようなことに興味をもち共感することができるかということは、仕事の適性にも少なからず影響します。
クライアントにより適性が異なることも
どのようなクライアントを相手とするかにより、適性がわかることもあります。例えば、これまで個人のクライアントを中心に扱っていた人が企業法務を中心に担当することになった場合、個人と法人相手では案件の内容やクライアントへの対応の仕方も異なります。自分はどちらの場合の方が働きやすいかを考えることが、自分の適性を知る第一歩になるでしょう。
自分に合った法律事務所を見つけるには
転職先の法律事務所で仕事をやっていくためには、自分に向いている業務分野の適性を知った上で、求められる業務内容が合致する事務所をみつけることです。さらにその職場で自分らしく仕事を続けることができ、快適に働けるかどうかも大事なポイントです。
気になる法律事務所があれば情報収集を念入りに
自分に合った法律事務所に転職する為には、その事務所についてよく調べ、業務内容や職場環境、また事務所の雰囲気が自分に合いそうかどうかを確認することが重要です。
- ホームページ等でチェック
- 求められているものを理解する
- 面接の場でも確認
ホームページ等でチェック
まずは法律事務所のホームページをくまなくリサーチし、事務所の規模や主な業務分野、これまでの取り扱い案件などについて調べましょう。さらに、働いている弁護士はどんな人か、経営理念や代表の考え方なども確認し、社風や職場環境やの雰囲気を知ることも大事です。
求められているものを理解する
求人情報の募集要項をしっかり確認し、その法律事務所がどのような業務や人物を求めているのかをしっかり理解することや就職・転職活動の基本です。自分が求められる人物像に合致しているかどうかよく考えてみましょう。
面接の場でも確認
面接の場は職場の雰囲気を知る一番のチャンスです。事務所のエントランスや対応してくれた人に対し直感的に感じた印象は意外に大事です。また、業務内容や今後の事務所の経営方針などについて質問や疑問点があればきちんと確認しましょう。
転職エージェントを利用する
法律事務は特殊な業種なので、ハローワークや求人情報誌のみで求人を探すには難しい面もあります。転職サイトや転職エージェントなども利用して上手に情報収集を行いましょう。
口コミで評判を確認する
転職情報サイトに登録すれば、興味がある法律事務所の求人情報を得ることができます。また実際に働いている人や過去に働いていた人の口コミはその事務所を知る大きな手がかりになるでしょう。
実際に紹介してもらう
転職エージェントでは、登録者の適性や要望に応じて登録者と求人を出している企業とマッチングを行っています。エージェントの担当者のサポートを受けることで、これまでの経歴を客観的に評価してもらうことができ、自分の適性に合う転職先を紹介してもらうことが可能です。
業務分野の異なる法律事務所への転職も自分の勇気次第
業務分野の異なる法律事務所に転職する場合、よい条件の求人募集があっても経験がないからと応募を躊躇してしまうかもしれません。しかし、念入りに情報収集を行って、その事務所が自分の適性に合っていると判断したら、勇気を出して求人に応募してみましょう。長く働いてキャリアアップを図るためにも、仕事がしやすい職場に出会えるといいですね。