弁護士秘書のワークライフバランス~法律事務は子育て中も働ける仕事?
弁護士秘書は全国的に需要があり、一度職場を離れたとしてもキャリアを続けやすいお仕事です。ただし、妊娠・出産となると法律事務所によって職場環境に差があるのが現状です。出産後も働き続けるためには、担当弁護士や同僚と良好な人間関係を築くこと、仕事内容を見直すことなど、努力と工夫も必要になります。
法律事務は一度退職してもキャリアを継続しやすい仕事
法律事務職員、いわゆる弁護士秘書は、夜勤や出張、転勤もほとんどないため、繁忙期の残業に理解のあるパートナーであれば、家庭と両立しやすいお仕事です。しかし、女性の場合パートナーの転勤などさまざまな理由で退職を余儀なくされることがあります。ここでは、一度職場を離れても弁護士秘書がキャリアを継続できるのか見ていきましょう。
実務経験のある弁護士秘書は再就職しやすい
弁護士秘書は、経験と努力の積み重ねが求められる専門性の高いお仕事です。そのため、通常の一般事務よりも実務経験が優遇され、近年ニーズも高まっているので再就職はそれほど難しくないでしょう。1つの法律事務所で定年まで勤めることが難しい女性にも、魅力的な職業です。
法律事務所は全国にある
人や法人の抱える問題を扱う法律事務所は、当然ながら全国に存在します。さらに民事訴訟、刑事訴訟、会社法、労働法など全国共通の法令に基づいて行う仕事なので、同様の事件を扱う法律事務所なら再就職後も即戦力として活躍できるでしょう。
弁護士秘書は今後ますます必要とされる
1999年以来行われている司法制度改革によって、現在、弁護士数が飛躍的に増えています。さらに、報酬規定の撤廃、広告の自由化がされたことで、弁護士は激しい競争にさらされています。弁護士が競争を生き抜くための強力なサポーターとして、優秀な弁護士秘書の需要はますます高まっていくと予想されます。
弁護士秘書のスキルは応用がきく
弁護士秘書の仕事内容は秘書業務や法律事務など多岐にわたるため、法律事務所以外でも経験が活かせます。高度な法律事務までこなしていた人なら、一般企業の法務部や銀行、不動産会社など法律と関わりが深い職業に転職するという選択肢もあります。また、司法書士や行政書士の資格を取って独立する人や、弁護士秘書としてさらなるキャリアアップを果たす人もいます。もしくは、他業界で秘書職、事務員としても活躍できるでしょう。このように、ライフスタイルに合わせて柔軟にキャリア形成ができる職業でもあります。
弁護士秘書の妊娠・出産後の職場環境は事務所により差も
結婚よりも大きく仕事に影響するのが、妊娠・出産です。産休・育休は法律に定められているため、法律家である弁護士が要件を満たす人に「取らせない」とは言えないのですが、実際には弁護士の考え方や事務所の慣習によって対応はまちまちです。
就職前の見極めと意思表示が大事
弁護士秘書が妊娠・出産後も働き続けられるかは、法律事務所によって大きく差があるのが現状です。そのため、就職前に次のことをおすすめします。
産休・育休の前例があるか確認しておく
産休・育休取得を掲げていても、実は名目だけという事務所も少なくありません。休暇中もほかのメンバーで補える大規模な事務所は比較的続けやすいですが、妊娠したら肩を叩かれるという古い体質の事務所もあります。できれば採用試験を受ける前に、休暇を取得後、育児をしながら働いている先輩が実際にいるのかを確認しておくとよいでしょう。
面接で出産後も働きたい意思を伝えておく
採用してもらう身としては言いにくいかもしれませんが、面接でしっかり「出産後も働き続けたいが、それでもいいか」とお互いの意思を確認しておくことが理想です。理解ある事務所に採用されれば、それだけ長く働きやすくなります。
実務経験と人間関係が重視される
弁護士秘書は実務経験と人間関係が重視される職業です。そのため、妊娠前から地固めをしておくことで産後も復帰できる可能性が高くなります。
経験と実績が武器になる
法律事務所にとって最も欲しい人材は、その法律事務所の仕事に慣れている人です。妊娠前にコツコツと経験・実績を積み、法律事務所にとってオンリーワンの人材になっていれば、退職を迫られることは少なくなります。
担当弁護士との信頼関係を築いておく
弁護士にとって、全部を言わなくても察して速やかに対処できる、自分の仕事の流れや癖を理解しているような秘書は手放したくないものです。担当弁護士と信頼関係を築いておけば、新人を採用せずに産後の復帰を待ってくれる可能性が高まります。
弁護士秘書の仕事と育児の両立には周囲の協力が不可欠
産休・育休取得というハードルをクリアしても、さらに高いハードルが育児と仕事の両立です。それでも、協力者を見つけることや仕事内容の見直しで乗り切りやすくなります。
男性優位の職場環境も変わりつつある
女性が育児をしながら働くためには、家族はもちろん職場の人も含めて周りの協力が不可欠です。法律事務所は、育児に対する理解や協力は得やすい職場環境なのでしょうか。
同僚に女性が多い
育児をしながら働いていると、子どもの急な病気や学校行事など、どうしても同僚に負担をかけてしまいます。弁護士秘書は同僚も女性が多いため、育児の経験者、またはこれから出産を考えている女性なら心強い協力者になってくれるかもしれません。ただし、女性だからと言って皆が協力的はありませんので、残業ができる日は同僚を手伝うなど最大限の気配りは必要です。
女性弁護士も増加の傾向
2016年3月31日時点の女性弁護士数は6,896人で、1990年からの26年間で約9倍に増えています(弁護士白書 2016年版)。今後、ますます女性弁護士は増加すると予想されますので、圧倒的に男性が仕切ってきた法律事務所の慣習も少しずつ変わってくるでしょう。担当弁護士が女性であれば、妊娠・出産期の働き方についてより相談しやすいはずです。
現状を変えてもらうことも1つの方法
出産後も安心して働き続けるためには、無理して自分を合わせるだけでなく、現状を自分に合わせて変えてもらうことも必要です。その点で、法律事務所は大企業よりも下の声が上に届きやすい環境といえます。
仕事内容の見直しで続けやすくなる
弁護士秘書の仕事の中で、秘書業務は弁護士の予定に左右されるため自分で調整するのは難しいでしょう。一方で、法律事務の仕事は締め切りさえ守れば比較的自分のペースでできる仕事です。同僚や担当弁護士と相談しながら、秘書業務を減らして事務仕事を増やすなど、仕事内容の見直しを依頼してみるのも有効です。
女性も働きやすい職場環境を求めて声を上げる
まだまだ古い体質の法律事務所も少なくありませんが、少しずつ働く女性への理解が進んでいるのも事実です。この流れを加速させるためにも、また後に続く女性たちのためにも、事務所の管理者、弁護士会、日本弁護士連合会などに働く女性の声を届ける勇気も必要かもしれません。
仕事への情熱・スキル・人間関係の3要素が大事
弁護士秘書の結婚後や出産後のワークライフバランスについて紹介してきました。経験があれば長く続けやすいお仕事ではありますが、子育てしながら働く環境となると他の業界同様まだ発展途上の部分があるようです。
あらゆる要素で状況も変化しますので「弁護士秘書としてずっと働き続けたい」と思えたら、まずはその気持ちを大切に精一杯仕事に打ち込んでみることをおすすめします。
仕事への情熱とスキル、良好な人間関係があれば、ライフスタイルが変わっても臨機応変に対応しながらキャリアを形成していけるのではないでしょうか。