企業内弁護士のキャリアパス|転職目的で選ぶ自分に合った転職先

インハウスロイヤーの会議風景

インハウスロイヤー(企業内弁護士)の就職先としては、大きく金融機関と事業会社の2つに分けられますが、その先に取り扱う業務分野がさらに細かく分かれています。インハウスロイヤーとして就職・転職を考える際は、まずどんな分野に携わりたいかを考え、求めらえる法律知識を身に着けることが必要です。

インハウスロイヤーの就職先はどんなところがある?

近年、「ビジネスの当事者として案件に関わりたい」「ワークライフバランスを重視したい」として、インハウスロイヤーを希望する弁護士が増加しています。また、「コンプライアンス業務に力を入れたい」「社内で法的問題を解決したい」との意向から、弁護士をインハウスロイヤーとして採用する企業が伸びを見せています。

金融機関と事業会社

インハウスロイヤーの就職先はまず、大きく分けて金融機関と事業会社の2通りあります。それぞれの中で、インハウスロイヤーとしてどのような仕事をするのかについて探っていきましょう。

金融機関

金融機関では、SPCの設立やM&A関連業務、与信・受信業務の紛争処理など幅広異分野があるため、法務部のみならず、商品設計や審査部門・投資銀行部門にも活躍の場があります。金融機関に入ると、高い分析力や金融商品取引法・証券取引法などの知識だけでなく、チームで仕事をする上でのコミュニケーション能力や銀行の一員として品位ある行動も求められます。

事業会社

事業会社では、インハウスロイヤーは法務部門に配属されることがほとんどで、契約や訴訟関連業務、コンプライアンス業務などに携わることになります。メーカーではPL法や知財法、製薬会社では薬機法(旧薬事法)、IT・通信ではプロバイダ責任制限法など、事業内容によって求められる法律の知識が異なるため、それぞれの業界にまつわる法律の知識を身に着ける必要があるでしょう。

事業会社での法務キャリアパス 3つの方向性

同じ事業会社でも、弁護士がキャリアを形成できる場はさらに大手企業・外資系企業・ベンチャー企業の3つに分かれます。それぞれどのような業務を行い、どのようなことが求められるのでしょうか。

大手企業

大手企業では、契約法務のみならず、コンプライアンス業務や国際法務など、多岐にわたる分野を経験できることが特徴です。多くの企業が数年ごとに担当業務を変えるジョブローテーション制度を導入しており、長く勤務すればするほど幅広い分野でのキャリアを積むことができます。

外資系企業

外資系企業では、英文契約書の作成やリーガルチェック、海外本社からの日本の法令に関する問い合わせ業務などがメインの業務となります。海外とのやり取りや英語での文書作成が発生するため、高い英語力が求められます。

ベンチャー企業

ベンチャー企業は、少数精鋭で事業を展開しているため、幅広い法務関連業務が経験できることが特徴です。小規模の会社では、経営判断に関わる業務から法務以外の事務・雑務まで何でもこなすことが必要なケースもあります。

事業会社の場合、インハウスロイヤーはどんな分野で活躍できる?

インハウスロイヤーが事業会社に入ってキャリアアップを考えるときに、キャリアを形成できる分野は色々ありますが、自分がどの分野で仕事をしたいのかをしっかり考えることが大切です。

インハウスロイヤーが活躍する4つの分野

インハウスロイヤーが活躍する分野は主に以下の4つに分けられます。それぞれの業務内容や求められる能力・スキルについても併せて見ていきましょう。

  • 不動産法務
  • 国際法務
  • 知財・特許
  • 総務法務・商事法務

不動産法務

近年、土地や建物を投資目的で購入する人が増えてきました。また、首都圏を中心に土地の再開発も進んでいます。不動産法務では、そのような不動産ファイナンスや不動産取引にかかる紛争処理、各種契約に関する法律業務、リーガルアドバイスなどを行っています。そのため、宅建法や建築基準法などの不動産関連法の知識が求められます。

国際法務

メーカー・商社を中心に、海外の企業と取引したり海外に現地法人を置くなど、海外進出を図る企業が増加しています。しかし、そのような中で、取引について紛争や訴訟が生じるケースも後を絶ちません。そのため、言葉も文化も異なる外国企業との紛争・訴訟に対応できるだけの高い語学力や交渉力が必要となります。

知財・特許

自社で研究開発したりデザインしたものをビジネスで独占的に使用するには、特許などを取得しておくことが必要です。知的財産権を確保しておけばそれがブランド構築にもなる一方で、模倣品や類似品が出回る恐れもあり、そのような場合には、差止請求や損害賠償請求などの対応をとることが可能です。そのため、特許法などの各種知的財産法や不正競争防止法などの知識が求められます。

総務法務・商事法務

株式総会の運営やリスク管理、コンプライアンス関連、コーポレートガバナンスなどに携わり、経営の根幹を支える業務を行います。また、総務部門と兼務する場合はISO認証業務や人事・労務問題への対応などを行うこともあります。会社を支える幅広い業務に対応できるように、会社法や労働関連法、民法などの知識が必要です。

インハウスロイヤーとしてどうキャリアアップするか?

企業などでインハウスロイヤーとして勤務するにあたり、どのようにステップアップしていくのでしょうか。インハウスロイヤーでのキャリアパス形成の仕方について見てみましょう。

  1. まずは一スタッフから
  2. リーダー・マネージャー・課長
  3. 法務部長・法務担当役員

まずは一スタッフから

インハウスロイヤーとして入社後は、多くの場合一スタッフとして法務部門に配属され、以下のような業務を行います。ジョブローテーション制を取っている企業では、キャリアを重ねる中で他の職務に就くこともあります。

  • 契約書作成・レビュー
  • クレーム・紛争対応
  • 法務相談
  • コンプライアンスチェック
  • 法令のリサーチ
  • 株主総会対応  など

リーダー・マネージャー・課長

しばらく同じ会社で業務経験を積んでリーダーやマネージャークラスに昇格すると、責任ある仕事を任されることも増え、以下のような業務に従事することになります。

  • コンプライアンス推進
  • リスク管理
  • リーガルチェック
  • 社内ガバナンス企画立案  など

法務部長や法務担当役員

部長や役員クラスになると、法務部全体を俯瞰的に見て業務が滞りなく進んでいるかをチェックする役割をも担うようになります。また、対外的に「会社の顔」として出ていく場面も増えます。部長・役員クラスが携わる業務内容は以下の通りです。

  • 法務部のマネジメント
  • リスクマネジメント
  • リーガルマインドの醸成強化
  • 外部関係者との調整・折衝
  • 他部署での契約締結時の助言・交渉サポート
  • 法的トラブル対応  など

弁護士・企業人として、まずはどんな仕事がしたいか考えよう

インハウスロイヤーを志望するなら、就職・転職活動をする前にどのような分野の仕事がしたいのかを考えることが大切です。分野によってはある程度業界や業種が定まってくることもあります。やりたい仕事がある程度固まった上で志望業界や企業を絞っていくと、効率よく就職・転職活動ができるでしょう。

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