弁護士のキャリアパス|将来の独立のため弁護士が学ぶべきポイントとは
適当な就職先が見つからない、自分の名前を掲げたい等、弁護士が独立を目指す理由は様々です。しかし、独立後は全ての業務を自分で行わなければならないので、いくら弁護士でも何の準備もなしに独立してうまくやっていくのは難しいと言えます。そこで今回は、将来独立を考える弁護士が学ぶべきポイントを解説していきます。
独立して成功するためにはどうしたらいいの?
弁護士が独立を考える理由は様々ですが、独立して成功する弁護士もいれば失敗する弁護士もいます。その違いはどこにあるのでしょうか?
独立後に求められるスキルを身に付けているか
独立後は事務所の業務を回すために様々な知識やスキルが必要になります。そして、それらが独立開業の時点で身に付いているかどうかが、その後の事務所の業績に大きく影響します。では、具体的にどの様なスキルが必要なのでしょうか。
マーケティング能力
マーケティング能力は独立後に不可欠なスキルと言えます。事務所に所属しているうちは経営者である“ボス弁”の指示に従って働いていればよいですが、独立後は自力で仕事を取ってこなければなりません。そのため、対外的な営業力・集客力が必要になります。例えば、広告ひとつとってもどの様な手法が効果的か、費用対効果はどうか等、押さえておくべき点はいろいろあります。ポイントを把握しておかなければ、いくらお金をかけても無駄になってしまう可能性があるのです。
経営に関するノウハウ
独立後は経営者となるので、経営戦略や戦術、仕事の回し方等経営に関する具体的なノウハウも欠かせません。事務所の立地に関しても、経営路線や地域のニーズの兼ね合い、競合他社はあるか等によっても変わってきます。また、成功要素・失敗因子を事務所内外の両面から的確に判断した上で、綿密な経営シュミレーションができる能力も大切です。
計画性を伴った独立の準備ができているか
独立後に重要となることを先んじて予測し、それに備えて計画的に準備しておくことは独立後スムーズに業務を進めていくために非常に有効です。ここでは、独立後に大切になることを、経営戦略の観点から具体的に解説します。
分野に特化すること
インターネットの普及等により、昔と比較して一般人でも法律の知識を容易に得ることができる様になりました。それに伴い、顧客からの要求も専門性の高いものになってきているため、特定の分野に特化して深い知識をもって顧客の対応にあたることが望まれます。
差別化を図ること
司法制度改革により弁護士の数は増加し、競争は熾烈化しました。そんな中で生き残るためには、他の事務所との差別化を図ることが非常に重要と言えます。事務所の方針を定めてセールスポイントを作ることも一つの手段です。
リスクへの対策ができているか
独立開業は様々なリスクが伴います。その来るべき脅威に備えてあらかじめ策を講じているかどうかが成功への分かれ道となります。特にリスクとなりうる事項について見ていきましょう。
情報の流出・漏洩
近年、サイバー攻撃や不正アクセス等のインターネットを利用した犯罪が増えています。そのため、情報セキュリティーを強化することが重要です。また、なりすましやアカウントの乗っ取りなど新たな手口も次々と現れており、個人情報等の重要な情報の漏洩を防ぐための対策が求められます。
弁護士に賠償責任が問われることも
弁護士の過失により依頼人が損害を被った場合に、弁護士が『弁護過誤』で告訴されるケースもあります。これに備えた『弁護士賠償責任保険』が用意されてはいますが、現実には弁護過誤に該当するケースはまれで、弁護士に明らかな非があるとは言えず賠償責任には及ばないケースが多くなっています。しかし、万一に備えてこのような保険を利用するのもよいでしょう。
弁護士が独立するために必要な費用はどれくらい?
弁護士が独立開業するには費用はいくらかかるのでしょうか。何にどのくらいの金額をかけると良いのか、具体的に見ていきましょう。
設備にかかる費用
医者等の特殊な装置を必要とする職業と違い、弁護士活動には特別な機器は必要ありません。そのため設備費は比較的安く抑えることができます。
備品の費用
新規に開業する際にはデスクやプリンター、応接セット等が必要です。但し収入が保証されていない段階でむやみに高額なものを購入すると資金繰りが追い付かないリスクもあるので、備品については必要以上に多額の資金をつぎ込む必要はないと言えるでしょう。
オフィスの家賃
独立開業するなら、立地条件のよいところに事務所を構えたいと誰も思うでしょう。しかし、好立地なら当然家賃も高くなります。また依頼人の中には目立たない場所にある事務所を好む人もいるので、必ずしも一等地がよいとは限りません。家賃に関しては、10坪程度の物件であれば10万円程度で借りることができますが、好立地で広い場所を借りようと思えば月々100万円以上かかることもあります。資金が潤沢にある場合を除けば、家賃にかける費用は抑えるのが賢明です。
運営にかかる費用
予算がどれくらいあるのかにもよりますが、設備費と同様、収入の目途が立っていないうちから運営面に多くの資金を費やすのは得策とは言えません。
人件費
弁護士事務所を経営していく上で最も費用がかかるのが、人件費と言われています。独立開業する時にサポートしてくれる従業員がいれば、業務負担が軽減されるでしょう。しかし、最初から従業員を多くすると収入が順調に増えなかったときに給料の支払ができなくなる可能性もあります。事務所を立ち上げてまもない頃には、極力少ない人数で始めるのが賢明です。
広告費
独立する上で広報活動は極めて重要です。そのため広告宣伝費については多少多くの予算をかけてもよいと言えます。広告にはマスメディア広告やウェブ広告、チラシ等の種類がありますが、効果にはそれぞれ一長一短があります。ターゲットを誰にするか、どのような分野の案件を扱うかによって効果が得られる広告媒体は変わってくるでしょう。
独立の際に気になるポイント
ここまで弁護士が独立する上で重要なことを解説してきました。最後に、独立を考える多くの弁護士が疑問に思うであろうことについて見ていきましょう。
独立開業する時期はいつ頃がいいの?
一昔前までは、独立開業するのはベテラン弁護士がほとんどでした。しかし、近年は若手の弁護士が独立するケースも増えています。では、独立するタイミングはいつ頃がベストなのでしょうか?
ベストタイミングは人それぞれ
一概にこのタイミングがベストであると断定することはできません。独立に必要なのは経営戦略や事業計画、それを実行に移すための手腕や資金力です。いくら弁護士として勤めている期間が長くても、ただ与えられた業務のみを淡々とこなしているだけでは必要なスキルを身に付けることはできません。
ベストタイミングは独立ノウハウ・スキルが身についたとき
逆に、独立を目指してノウハウやスキルを習得すべく意識して働いていれば、勤続年数の浅い若手の弁護士でも独立して成功することは十分に可能です。独立開業する弁護士を多く輩出している事務所に入所して、先輩弁護士が独立の準備をするのを観察するのもよいでしょう。独立を考えるなら、独立型の法律事務所で経験を積むことが一番の近道です。
独立後、成功するためには経営ノウハウが必要
弁護士は“士業”なので、いつでも自分で独立・開業することが可能です。しかし、独立後うまくやっていく為には経営者としてのノウハウを身に付けておく必要があります。したがって、まずは独立型の法律事務所に入って事務所の経営の仕方を学ぶことが独立開業への第一歩であると言えます。