インハウスロイヤー(企業内弁護士)への転職を目指すには?

相談を受けるインハウスロイヤー

近年、法的問題を社内で解決したいと考える企業やコンプライアンスを重視する企業が増加しています。また、若手を中心にビジネスの最前線に立って案件に携わりたいと考える弁護士も増えていることから、インハウスロイヤーが増加しています。インハウスロイヤーに求められる役割や必要な経験・スキルとは、どんなものなのでしょうか。

インハウスロイヤー(企業内弁護士)の求人は増えている

日本組織内弁護士協会の調べによると、インハウスロイヤー(企業内弁護士)の数は2001年9月の時点ではたった66名しかいませんでしたが、2016年6月には1707名まで増加しています。
※出典 PDFファイル:日本組織内弁護士協会「企業内弁護士数の推移(2001年~2016年)」

企業でのインハウスロイヤーの需要が増えている背景とは

現代では法務部門での業務がますます複雑化しており、企業からのインハウスロイヤーに対する需要も増えています。また、弁護士の急増により需給バランスが崩れて採用コストが下がってきたこともあり、インハウスロイヤーは今まさに「売り手市場」と言えるでしょう。

コンプライアンス意識の高まり

近年、有名企業の不祥事が相次ぎ、世間から注目されることが増えています。そんな中、企業の中でコンプライアンス意識が高まり、法的リスクに対応できる体制を整えたり社員教育を行うためにインハウスロイヤーの力を借りようとする企業が増えています。

法的問題を社内で解決できる

企業が抱える法的問題は企業機密をはらんでいることが多く、外部の弁護士には話しにくいこともあります。そのため、社内事情や業務に精通しており、また外部弁護士とも専門性をもって対等に話ができる人物が求められるようになってきました。

コスト削減にもなる

司法制度改革による弁護士の急増に伴って需給バランスが崩れ、弁護士を採用するコストが低くなっています。そのため、外部弁護士に委託するよりも社内で弁護士を雇用するほうがコストを抑えられることも、インハウスロイヤーの採用が増えている要因の一つです。

インハウスロイヤーを志す弁護士も増えている

若手の弁護士を中心に、「年収を下げてでもインハウスロイヤーを目指したい」とする弁護士が増えています。そこには、企業で働くことならではの事情がありました。

ビジネスの事業に携わりたい

彼らがインハウスロイヤーを志す理由は、自らがビジネスの最前線に立って当事者として事業にかかわりたいと考えているからです。外部の弁護士として間接的にアドバイスをするだけでは、関われることにも限界があります。ビジネスの世界に身を投じることで、直接的に案件を手掛けることに大いなる魅力を感じている弁護士が多く見受けられます。

ワークライフバランスを重視したい

法律事務所での弁護士業務は多忙を極めますが、インハウスロイヤーは会社員と同じ扱いなので、激務になることは比較的少なくなっています。また、インハウスロイヤーを採用している企業は大企業が多く、経済的にも安定していることが若手弁護士に人気である理由のひとつです。

インハウスロイヤー(企業内弁護士)の役割とは?

インハウスロイヤーには、企業活動の中に潜む法的リスクの発見、リスクへの対応をはじめ、問題の後処理や再発防止対策に至るまで幅広い役割が求められています。

内部統制の環境整備を行う

インハウスロイヤーは、社内で起こるあらゆる法的問題に対処し、解決を図らなければなりません。これらの業務を経営陣に近いところで行うため、インハウスロイヤーの仕事は「内部統制の環境整備」を行うこととも言えるでしょう。

問題の発見と対処方法の決定

社内での法律相談やクライアントからのクレームを通して社内調査や処理を行うことを通して法的問題点を洗い出します。そこで、問題に対してどう処理するのか、処理を外部の弁護士に任せるのか、社内解決を図るのかなどについて検討し、方針を決定します。

事後処理と再発防止対策

問題への対処が完了したら、社内の上層部へ紛争が解決したことを報告します。必要に応じて、外部弁護士へ業務を委託していれば報酬額を決めたり、組織の改正などの事後処理を行います。また、再発防止のための社内研修やマニュアルの整備などをすることもあります。

インハウスロイヤー(企業内弁護士)になるには

ときには経営陣の中に入り込んで、社内の法的問題への対処や再発防止にあたるインハウスロイヤー。そんなインハウスロイヤーになるにはどうすればよいのでしょうか。

インハウスロイヤーに必要なもの

インハウスロイヤーの求人に応募する際には、高度な法律知識はもちろんのこと、高いビジネスセンスも問われます。具体的には、どんなことが必要なのでしょうか。

実務経験

企業法務の分野はもちろんのこと、M&A、IT・通信、知的財産分野などでの業務経験も求められる場合があります。企業での勤務経験もあったほうが望ましいとされているところが多く、企業の中には必須条件としていることもあります。

高い英語力が求められることも

外資系企業や海外取引が多い企業の場合は、英文契約書を作成・チェックすることが多いことため、高い英語能力が求められる場合があります。TOEICで最低700点以上、できれば800点以上を取っておくとよいでしょう。(※2)

マネジメント経験

若いアソシエイトクラスの弁護士が求められることが多いですが、マネジメント経験のある弁護士もその希少性から転職市場では高いニーズがあります。実務経験・弁護士の知識・マネジメント経験がそろえば、即戦力として有利に転職活動が進められるでしょう。

インハウスロイヤーの待遇は?

企業の中で仕事を行うためか、弁護士と言えども給与水準や勤務時間はおおむね一般の会社員と大差はありません。このことは、日々多忙を極める法律事務所所属の弁護士と大きく異なる点です。

年収は会社員並みの水準

年収は法律事務所を下回ることの多い傾向がありますが、「時給」換算するとアップする場合も少なくありません。給与水準を下げないためには、給与の高い企業を選ぶ必要がありますが、競争率も高いため、少し選択の幅を広げてみることも大切です。

勤務時間も会社員と変わらない

インハウスロイヤーの勤務時間は「1日あたり8~10時間」が多数派を占めており、一般の会社員並みであることがわかります。残業時間も、ひと月あたり約40時間程度におさまることが一般的です。法律事務所の弁護士と比べると、インハウスロイヤーの勤務時間は少ないと言えるでしょう。(※3)

法律知識とビジネス経験が武器になる!

インハウスロイヤーには、司法試験で培った深い法律知識と、ビジネスセンスが求められます。そのため、インハウスロイヤーへの転職を目指すのであれば、数年は企業で働く経験をしてからのほうがベターです。そうすれば、ビジネスの世界でどんなことが求められるのかが実感としてわかるようになるでしょう。

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