海外案件を手がけたい弁護士 法律事務所選びのポイントとは?
さまざまな業種の企業のグローバル化が進む今日では、海外案件に関わる法律事務所が増えています。活躍の場が広がる上にかなりの収入も見込めるため、海外案件に携わりたいと考える弁護士は多いでしょう。しかし、海外事情に精通していることや高い語学力、交渉力が備わっていることなどが条件となるためかなりハードルが高くなっています。
海外案件を手がけたい弁護士の事務所選びのポイント
海外と日本では様々な面で違いがあり、国内での常識は海外では役に立ちません。したがって、海外案件を手がける法律事務所に転職したい場合は、そのことをあらかじめ把握しておくことが重要です。
海外案件にはどんなものがあるの?
海外案件を手がける事務所に入るには、業務内容を知っておく必要があります。まずは、海外案件にはどのようなものがあるのか、近年重要性が高まっている分野を中心に見ていきましょう。
訴訟
海外案件として多いもののひとつに訴訟が挙げられます。現地の法律事務所と連携しながら訴訟戦略を練ったり、証拠収集・開示などの準備を行います。分野としては、商標や特許などの知的財産権に関するものが多いのが特徴です。
М&A
М&Aも海外案件の中では多い部類に入ります。M&A支援会社の調べによると、2016年に日本企業が関わったM&Aの件数は2652件と5年連続の伸びを見せており、金額も16兆6133億円と高い水準を維持しています。中でも、ソフトバンクグループがイギリスの半導体関連企業を3兆3000億円で買収したことは大きな話題となりました。(※1)
海外案件を手がけたい弁護士はどんな事務所を選べばいいの?
様々な業種のあらゆる企業がグローバル化・国際化を進めている今日では、海外案件を手がけたいと考える弁護士も多いでしょう。では、海外案件に携わるにはどの様な事務所を選べばよいのでしょうか。
- 大手法律事務所
- 外国の法律事務所
- 外資系法律事務所
- 渉外法律事務所
大手法律事務所
海外案件を手がけるには、四大法律事務所を始めとした大手の法律事務所に入ると良いでしょう。国内に100人を超える規模の弁護士事務所は20近くあり、この様な事務所は多くの場合、海外業務、国際案件を掲げています。
外国の法律事務所
外国の法律事務所に入れば案件の多くは海外のものです。しかしアメリカで勤務しようとすれば、各州が認定する弁護士資格『米国弁護士資格』を取得していなければ弁護士として活動ができない点に留意する必要があります。日本で弁護士資格を取得しているからといってアメリカですぐに弁護士として働ける訳ではないのです。
外資系法律事務所
外資系法律事務所は外国の法律事務所と連携していて、海外案件を中心に手がけています。世界的規模の法律事務所ネットワークの一部として機能する外資系法律事務所では、ヘッドオフィスの所在地や方針によって、中国系・英国系・米国系など、相手にする国も異なります。
渉外法律事務所
海外の案件を手がけたい場合、渉外法律事務所も選択肢の一つです。渉外法律事務所の看板を掲げているところでは、海外案件のみならず、企業法務や個人事件など幅広い案件を携えている事務所が多くあります。
海外案件を手がけるときに要求されるものは?
法律事務所によって、手がけている案件の内容や関わりのある国は違います。それぞれのケースによって要求されることも異なるため、それぞれの案件で何が要求されるのかを事前に確認しておく必要があります。
海外案件を手掛ける上で必須となるスキルとは
海外案件を手掛けている法律事務所で働く上で欠かせないスキルは色々あります。具体的にはどんなスキルが必要になるのかについて、見ていきましょう。
- コミュニケーションスキル
- リサーチ能力
- 精神的な“タフさ”
コミュニケーションスキル
まず必須となるのが語学力ですが、主要言語の英語だけでなく、近年は中国語も重要になっています。またコミュニケーション能力や交渉力も、スムーズに業務を進行する為には必要なスキルと言えます。
リサーチ能力
海外案件では深く知らない相手と交渉することになるため、相手企業の情報を調べることが重要なポイントとなります。したがって、高い分析力や調査能力が求められると言えます。
精神的な“タフさ”
海外案件を担当すると高い収入を得られる一方で、勤務時間が長時間にわたることも度々あるため、高い集中力やタフな精神力が要求されると言えます。また、訴訟やМ&Aでは、相手方の法律上の権利などを粘り強く確認する忍耐力が必要になります。
海外案件を担当する上で“プラスα”になる価値
- 人材育成力
- 異文化理解
- 国内外情勢の把握
国際案件や海外案件を手がける弁護士は、活躍できるようになると億単位の年収を得ることも可能ですが、そのためにはプラスαのスキルや知識を身に付けておく必要があります。
人材育成力
途上国を中心に、司法制度がまだまだ整っていない国が世界にはたくさんあります。弁護士がそのような国に行って、調停人などの人材を育成したり、司法制度や法律の整備にアドバイザーとして関わるケースもあります。国際協力に興味のある人であれば、挑戦してみるのもよいのではないでしょうか。
異文化理解
日本の文化と海外のそれとでは大きく乖離しているため、案件の当事国となる国のしきたりやならわし、慣習、考え方の違いや国民性等を認識した上で実務にあたることが求められます。それ故にその土地に暮らした経験があれば重宝がられるでしょう。
国内外情勢の把握
海外案件を手がけるには当事国の実情だけでなく、日本との関係性やそれぞれの国と締結した条約や法律、及びその変遷等についても熟知していることが必要です。例えば、2016年9月の三資法の改訂ではそれまで制限されていた中国での外資系国際法律事務所の活動の規制が緩和されました。それにより外資系法律事務所の活躍の場は拡がり、日本企業は取引の迅速性の向上やコストの削減等様々な面で恩恵を受けられる様になったのです。こういった事情に精通していることは、М&Aや取引等様々な場面で有利に働きます。
希望や得意分野を考慮して、自分に合った法律事務所を選ぼう
事務所ごとに手がけるフィールドや国が異なることがある為、求められるスキルも変わってきます。事前に事務所の業務内容や傾向を調べて自分が手がけたいのはどんな業務か、得意なのはどの分野か等を考慮して自分に合った事務所を選ぶことが肝心と言えるでしょう。